この記事はこんな悩みに答えます…
- サポートグループアプローチってなに?
- 誰に使えるの?
- どんな時に使えるの?
あなたはサポートグループ・アプローチを知っていますか?
サポートグループ・アプローチは「解決志向アプローチ」と「ピア・サポート」を合体させたハイブリットな実践方法です。
私は中学校において、いじめだけではなく不登校の事例にもこの方法を適用し、
2009年から9事例中7事例の学級復帰を果たす結果を得ました。
現在もいじめ被害者が不登校にならない予防的な手立てとして、
また、小学校からの長期的な不登校解消に実践を展開しています。
この経験を活かして、サポートグループ・アプローチの普及に尽力するため、
北海道 小樽でサポートグループ・アプローチ研究会を立ち上げています。
この記事ではサポートグループ・アプローチがどんな手法なのか解説したいと思います。
Contents
サポートグループ・アプローチとは
「サポートグループ・アプローチ」は、イギリスのスー・ヤング(Young,S.1998、2001、2007、2009)の実践を基本的なモデルとしています。
いじめ予防プログラムとして、既に英国政府のガイダンスに組み込まれています。
いじめが原因の不登校の小学生に対する実践で、
50事例のうち47事例(94%)はいじめがなくなり、
そのうち40事例(80%)ではすぐに効果があったと報告されるている非常に優れた実践方法です。
サポートグループ・アプローチは、
「解決志向アプローチ」の考え方を原点とし、その面接スキルを使っていきます。
問題や原因、過去に焦点を当てるのではなく、
すでにある解決や未来(「どうなりたいか」「どうなっていればよいか」など)に焦点を当て、
子どもたちが潜在的に持っている強さや能力を高め、拡げていくことで問題解決の実現・構築を目指します。
そして、子どもたちのピア(仲間同士)の力を活かし、
相互に思いやり支え合いながら課題を解決していくピア・サポートを使います。
まさに、「解決志向アプローチ」と「ピア・サポート」を合体させたハイブリットな実践が
サポートグループ・アプローチと言えます。
図 サポートグループ・アプローチの概念
サポートグループ・アプローチの実践方法
サポートグループ・アプローチの実践方法を説明します。
サポートグループ・アプローチは以下のステップで進みます。
- 保護者との面談
- サポートを必要とする子との面談
- サポートグループ会議
- サポートグループによるピア・サポート活動
- サポートを必要とする子との面談(2回目)
- サポートグループ会議(2回目以降)
- サポートの必要性の有無を確認
サポートを必要としている子や保護者との面接の進め方(初回)
①相談者の話をよく聴き、解決像を描いてもらう
まず、いじめや不登校等の問題で連絡や相談を受けた時点で本人や保護者と会い、話をよく聴きます。
いじめや不登校になった原因や問題については一切聞きません。
その代わり
- 「これからの学校生活がどんなふうになっているといいと思いますか?」
- 「それが実現したら、今と何がどのように違っていますか?」
など、問題がない状態について詳しく聞き、解決像、未来像を描いてもらいます。
②サポートグループ・アプローチで支援することの了解を得る
そして、サポートグループ・アプローチの説明をし、この方法で支援することの了解を得ます。
中学生の場合、自分の問題解決に他の子どもがかかわることに同意しないこともあります。
あくまでも本人の意思を尊重して進めます。
③サポートグループのメンバーを本人と一緒に決める
次に、サポートグループのメンバーを本人と一緒に決めていきます。
サポートを必要としている子ども自身が
- 「付き合いにくい、付き合うのが難しい、苦手と思っている人は誰か」
- 「その難しい場面で周りにいた人は誰か」
- 「友達は誰か」
を聞きます。
本人を取り巻く人間関係が悪化していたり不登校が長期化していると、友達が一人もいないこともあります。
そのようなときは、「今後、仲良くしたいと思う人」「話すことができる人」などと聞くといいでしょう。
名前が挙がった子に対して、「なぜその子なのか」「その子とどんなことがあったのか」など
理由や詳細を聞いたりコメントを加えたりすることは一切せず、本人が挙げた子どもたちの中から、
5~8人のメンバーを一緒に決めていきます。
④少しでも楽しかったことをメモする課題を出して終了
「事態は必ず良い方向に動き出すから、今より少しは楽しかったこと、うれしかったこと、
プチハッピーと思ったことを、どんな小さなことでもいいからメモをとり、一週間後に教えてほしい」
と伝え、初回面接を終えます。
保護者には、担任の先生から後日、状況の連絡をすることを伝えます。
スー・ヤングは、サポートグループは、「(サポートを必要としている)その子が
付き合いにくいと思うすべての児童、嫌な状況下で周りにいる二~三人の他の児童、
そしてその子の友人または友だちになれそうな児童も含めて構成されます。
全部でおよそ5~8人の子どもになります。最低でも五人の児童にすることで、
違ったアイディアが出てきますし責任を分散できます。
そして、サポートグループの誰かがいつもそばについてくれる可能性が高まります。
9人以上の児童の場合には、面接の進行が少し遅くなり、そして一人当たりの貢献度の意義が薄まります」と述べています。
実際の場面では、担任の先生が「学級に素晴らしい子がいるので、その子をメンバーにします」とおっしゃることもあります。
しかし、あくまでもサポートを必要とする本人の意思を尊重し、本人が名前を挙げた子どもたちで進めることの理解を得ます。
サポートグループ会議の進め方(初回)
放課後、サポートグループのメンバーに教室などに集まってもらい、サポートグループ会議を開きます。
担任の先生にも同席していただきます。サポートを必要とする子どもは同席しません。
①安心できる雰囲気をつくってから、サポートグループ・アプローチの説明をする
まず集まってくれたことに感謝の意を伝えます。
そして、呼び集められたことに不安や心配を抱えている子もいますので、最近のブームやテレビ番組、アニメの話題などで雑談をして、和やかで安心できる場の雰囲気をつくってからサポートグループ・アプローチの説明をします。
- 「サポートを必要としている子が今よりハッピーになるために、みんなの力や助けを必要としている」
- 「みんなは私たちを助ける力やアイディアをたくさん持っているからグループのメンバーに選ばれた」
と伝えます。
「いじめ」という言葉は一切使いません。
時にサポートを必要としている子を取り巻く様々な出来事についてメンバー同士で話したがったり、原因を聞きたがったりすることもありますが、出来事に対して、いかなる判断も持ち込まないことが大切になります。
中立の立場で進めます。
②一週間でサポートできそうなことについてのアイディアを出してもらう
次に
「一週間でサポートできそうなことについて、どんな小さなことでもいいのでアイディアを出してもらえますか」
と問いかけます。
「休みが続いていたから心配していた」「みんなが待っていることを伝えたい」という声が出てきます。
そして「電話してみようかな」「朝迎えに行ってみる」等々、私が黙っていてもたくさんの提案が出されます。
私は子どもたちの自主性に任せ、出された提案の一つ一つを認め、受け止め、「なるほど、それはいいね」
「あなたならできる」等と傾聴しコンプリメントします。
そして「他にはどんな方法ある?」と質問し、さらに具体的な方法を引き出していきます。
「それはいつできそう?」と問いかけ、実行できるように支えます。
何も提案せず黙っている子には「他の人と一緒に何かするのはどうかしら?」と提案します。
サポートを必要としている子を心から心配し、友達を思う気持ちや他者支援しようとする意欲、行動を肯定し、それを意識し強められるようにするのです。
サポートを必要とする子と仲良くしてほしいと頼んだり、行動に責任を課したり約束させる等の
強要は極力しないようにする注意が必要です。
③一週間後に再び集まる約束をする
最後に、どんな努力をしたか話を聞くため、一週間後に再び集まる約束をします。
サポートを必要としている子との面接の進め方(2回目以降)
まず、困難な状況に対処してきたことをコンプリメントしエンパワーし、以前より良くなったことはどんなことかを聞きます。
「突然、電話が来て驚いたけど、謝ってくれてホッとした」「みんな心配しているからって言ってくれたから元気が出て犬の散歩に行った」
などと笑顔で話し、良い変化を見ることができます。
私は「誰のどんなサポートがあなたをハッピーにしたのか」について詳しく具体的に聞いていきます。
約一週間をひとサイクルとし、同様に振り返りの面接を繰り返していきます。
サポートグループ会議の進め方(2回目以降)
一週間前に提案したことと、この一週間で実行できたことを比較せずに、
「どのようなサポートができたか」「対象の子どもがどんな様子だったか」を具体的に詳しく報告し合います。
私は「それはよかった。ありがとう!」「あなた方の力は大きいわ。学級や私たちの宝物ね」などと
肯定的なフィードバック、コンプリメントをし、うまくいっている、成功していることに心から感謝と喜びを伝えます。
約一週間をひとサイクルとし、同様に振り返りの面接を繰り返していきます。
サポートを受けた子供の変化
サポートグループ・アプローチを開始し二週間もすると、両者に次のような様子が見られます。
友達関係が悪化し、心の傷が深く「自殺や転校を考えた」「誰にも会いたくない」「私にしたことを絶対許さない」と
断言していた子どもでも、たいがい初回面接後すぐに保健室登校します。
サポートが始まると「うざい」「かまわないでほしい」と言いますが、
交流が増えるにつれ徐々に緊張が解けて笑顔で話す様子が見られます。
そして、メンバー以外の子どもが保健室を訪れ、交流する姿も見られる頃には自ら教室へと復帰します。
教室復帰を果たし元気を取り戻した子どもは、今度は自分の周りで困っている友達を助けたいと一緒に保健室に来たり、
教室で友達をサポートする姿が見られるようになります。
子どもは子どもとのかかわりを通して自ら生きる意欲を持ち、行動、成果に変化を起こしていくことがわかります。
サポートグループのメンバーは、一週間後の集まりが待ちきれずに状況を報告しに来たり、
対象の子が登校したかどうかを確認しに来るなど「良い用事」で頻繁に来室するようになります。
私や担任の先生がサポートグループの存在自体を心から尊重し、
承認する肯定的なフィードバックを頻繁にする機会が増えることで、自信やモチベーション、責任感が持続し強化されます。
それが、サポートされる子のみならずサポートする子の成長を促すことになるのです。
さらに、学級の仲間たちにも変化が現れます。サポートグループが学級に結成された時点で、
対象の子どもへの関心が高まり、自分も何かしようと活発に動き始めるのです。
休み時間の保健室は、そんな子どもたちでにぎわい、笑顔で一杯になります。
そしてついに、担任の先生の授業や放課後活動などから、サポートグループや他の子どもたちに支えられ、
見守られながら自ら学級復帰の道を模索し、学級に戻っていきます。
保護者をはじめ本人をサポートした誰もが「もう大丈夫」と確認したらグループは解散し、活動は終了です。
まとめ
サポートグループ・アプローチは、私たちが想像する以上にダイナミックな変化を起こす
「子どもたちの、子どもたちによる、子どもたちのための課題解決方法」です。
私たち大人は、子どもたちに潜在する力を信じ、尊重し、惜しみないコンプリメントシャワーをするのみです。
八幡です。
この記事ではサポートグループ・アプローチの基本について書きたいと思います。